ポルフィリン代謝
ポルフィリン
窒素原子を1つだけ含んだ5員環の構造をもつ化合物をピロールという。このピロールが4つ集まって、メチン橋(-CH=)で結合したものがポルフィンであり、ポルフィンにさまざまな側鎖が付くことで、さまざまなポルフィリンがつくられる。
ヘム
ポルフィリンがもつ二価鉄錯体のことをヘムという。
おもなポルフィリンには、プロトポルフィリンⅨというものがある。プロトポルフィリンⅨにある二価鉄錯体をプロトヘムという。このプロトヘムが、一般的に「ヘム」とよばれる。
また、ヘムを含むタンパク質をヘムタンパク質という。ヘムタンパク質には、ヘモグロビンやカタラーゼなどがあてはまる。
ヘムの生合成
こちらでいう「ヘム」とは、プロトポルフィリンⅨの二価鉄錯体である「プロトヘム」のことである。生体にある大部分の細胞が、ヘムの生合成を行なう。
まず、ミトコンドリア内でグリシンとスクシニルCoAが反応し、5-アミノレブリン酸(ALA)がつくられる。このときの反応は、5-アミノレブリン酸合成酵素の触媒によるものである。5-アミノレブリン酸は細胞質に移る。
5-アミノレブリン酸が2つ結合すると、ポルホビリノーゲンとなる。そして、ポルホビリノーゲンが4つ結合することで、ヒドロキシメチルビランが生成される。
ヒドロキシメチルビランが脱水されてウロポルフィリノーゲンⅢとなり、ウロポルフィリノーゲンⅢの側鎖の酢酸基がメチル基に変わることで、コプロポルフィリノーゲンⅢが生成される。
コプロポルフィリノーゲンⅢは、ミトコンドリア内に移って、そのプロピオン酸基2つがビニル基になり、プロトポルフィリノーゲンⅨに変化する。
プロトポルフィリノーゲンⅨが酸化されるとプロトポルフィリンⅨとなり、その中心にFe²⁺が入り込むことでヘムとなる。
上記の反応の順番を以下に示す。
(ミトコンドリア)
・スクシニルCoA + グリシン
↓
・5-アミノレブリン酸(ALA)
↓
(つくられた 「5-アミノレブリン酸(ALA)」 は細胞質に移動する)
↓
(細胞質)
・5-アミノレブリン酸(ALA) ×2 (2つ結合)
↓
・ポルホビリノーゲン
↓
・ポルホビリノーゲン ×4 (4つ結合)
↓
・ヒドロキシメチルビラン
↓
・ウロポルフィリノーゲンⅢ
↓
・コプロポルフィリノーゲンⅢ
↓
(つくられた 「コプロポルフィリノーゲンⅢ」 はミトコンドリア内に移動する)
↓
(ミトコンドリア)
・コプロポルフィリノーゲンⅢ
↓
・プロトポルフィリノーゲンⅨ
↓
・プロトポルフィリンⅨ
↓
・ヘム(プロトヘム)
また、細胞内におけるヘムの濃度が増えることで、5-アミノレブリン酸合成こその生合成がおこらなくなる。これにより、必要以上のヘムは生成されない。
ヘムの分解
生体に存在するヘムのうち、そのほとんどが赤血球の中のヘモグロビンとなっている。赤血球が約120日の寿命を迎えると、細網内皮系細胞に送られ、赤血球内のヘモグロビンがヘムとグロビンに分けられる。
発生したヘムとグロビンは、どちらもさらに分解が進められていく。
※細胞内皮系細胞
病原菌や老廃した赤血球などを食べて消化する細胞。リンパ節、肝臓、膵臓などの血液やリンパ液に接する場所に存在する。
ヘムの分解は、まず、酸素原子を与えるヘムオキシゲナーゼによって、ヘムがビリベルジンになるところからはじまる。この反応で、ヘムがもつFe²⁺は、遊離した状態になって、そのほとんどがヘムの生合成に用いられる。
その後、ビリベルジンは還元されることでビリルビンとなる。
・ビリルビンの代謝
つくられたビリルビンは、細胞外に移ってアルブミンと結合し、血液を通して肝臓の肝細胞に入る。
そこで、ビリルビンがUDPグルクロン酸との反応をおこし、グルクロン酸抱合によって抱合型ビリルビン(直接ビリルビンに相当)であるジグルクロニドや、グルクロン酸が1つ少ないモノグルクロニドとなる。
抱合型ビリルビンは、小腸で腸内細菌による加水分解を受けて遊離型ビリルビン(間接ビリルビンに相当)となる。遊離型ビリルビンが腸内細菌のはたらきで還元されると、ウロビリノーゲンに変化する。
ウロビリノーゲンの一方は、尿へと排出される。その際、ウロビリノーゲンが尿による酸化を受けてウロビリンに変化する。
ウロビリノーゲンのもう一方、腸管から血液を通して肝臓に移動し、ビリルビンやビリルビンの抱合体に戻る。そして、それぞれ胆汁へと排出される。この反応の流れを腸管循環という。
ウロビリノーゲンが腸内に存在するとき、腸内細菌に還元されることでステルコビリノーゲンに変化する。ステルコビリノーゲンは、腸内の酸素によってステルコビリンに変化する。