脂肪酸・コレステロール・プロスタグランジンの生合成
脂肪酸の生合成
脂肪酸は、グルコースをおもな材料とするアセチルCoAから生合成される。脂肪酸の生合成は、生体のさまざまな組織の細胞質で行なわれる。
アセチルCoAはミトコンドリアによってつくられ、その膜を通過するためにクエン酸回路の反応を受けてクエン酸となる。このクエン酸は、ミトコンドリアから細胞質に移動し、オキサロ酢酸とアセチルCoAへと分解される。ここでできたアセチルCoAが、細胞質に送られる。
一方、オキサロ酢酸は、ミトコンドリアの中に入るため、リンゴ酸かピルビン酸に変化する。そして、ミトコンドリアに入り込んで再びオキサロ酢酸へと戻ってから使われる。
脂肪酸の生合成の反応
脂肪酸が生合成の反応を受ける場合には、2つの酵素が関係している。それぞれ、アセチルCoAカルボキシラーゼ、脂肪酸合成酵素という酵素である。
・アセチルCoAカルボキシラーゼ
アセチルCoAからマロニルCoAの生成を行う酵素
・脂肪酸合成酵素
脂肪酸の生合成のうち、アセチルCoAカルボキシラーゼが担当していない反応全てをおこす酵素
脂肪酸の生合成は、マロニルCoAのマロニル基と、アセチルCoAのアセチル基が、それぞれ脂肪酸合成酵素のスルフヒドリル基(-SH)に結合することで始まる。
そこから先の反応は、次の順番でおこる。
・アセチル基の転移が、マロニル基の脱炭酸反応に合わせておこる。
↓
・ケトン基が還元される。
↓
・水酸基の部分が脱水される。
↓
・二重結合が還元される。
↓
・アシル基が転移する。
アシル基の転移までが、この反応経路の1つのサイクルとなる。脂肪酸合成酵素のスルフヒドリル基に空きがある場合、そのスルフヒドリル基にマロニル基が結合する。それにより、似た反応がくり返し行われる。そして、その度にアシル基の炭素数が2つずつ増える。
一般的に、アシル基がもつ炭素数が16になると、そのアシル基はパルミトイル基になる。すると、脂肪酸合成酵素自身の作用により、脂肪酸合成酵素からパルミトイル基が切り離され、パルミチン酸(炭素数:16)がつくられる。また、この反応ではステアリン酸(炭素数:18)、ミリスチン酸(炭素数:14)なども生成される。
この反応によって、生体内でさまざまな脂肪酸を生成できる。しかし、生成できない脂肪酸もある。α-リノレン酸、リノール酸、リノール酸からつくることができるアラキドン酸などが生成できない脂肪酸であり、それらを必須脂肪酸という。
コレステロールの生合成
生体膜や胆汁酸などの材料となるコレステロールは、アセチルCoAから生合成が始まる。まず、3分子のアセチルCoAからHMG-CoA(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoA)が生成される。
HMG-CoAは、コレステロール生合成の律速酵素となるHMG-CoA還元酵素のはたらきでメバロン酸に変化する。
メバロン酸からは、さまざまな反応を経て、イソペンテニルピロリン酸→(いくつかの反応)→スクレアレン→(いくつかの反応)→ラノテロールと変わっていく。そこからさらに、さまざまな反応を受け、最終的にコレステロールとなる。
プロスタグランジン類の生合成
プロスタグランジン類(エイコサノイド)は、PG(プロスタグランジン)、TX(トロンボキサン)、LT(ロイコトリエン)の3つを合わせたものを指す。
プロスタグランジン類は、アラキドン酸、EPA(エイコサペンタエン酸)、エイコサトリエン酸の3つの脂肪酸を材料として、それぞれの組織でつくられる。
これら3つの脂肪酸は、COX(シクロオキシゲナーゼ)の作用によって、酸素を2分子付けられたあと、さまざまな反応を経て、さまざまなPG(プロスタグランジン)、TX(トロンボキサン)を生成する。
・COXのアイソザイム
COX(シクロオキシゲナーゼ)には、2種類のアイソザイム(イソ酵素)が存在し、それぞれCOX-1、COX-2という。COX-1は、つねに多くの組織にある。COX-2は、必要に応じて決まった組織でだけ生成される。
また、脂肪酸がリポキシゲナーゼの作用を受ける場合には、酸素を1分子付けられた後でさまざまな反応を経て、さまざまなLT(ロイコトリエン)を生成する。