静脈圧、静脈還流、血圧と重力

静脈圧
静脈の血管壁はとても柔らかくて、伸び広がりやすい。そのため、静脈の内圧は、血管の容積が増えてもあまり変化しない。

 

静脈系には、体全体の血液の約60%が入っている。静脈は、容量血管ともよばれる。また、動脈系には、体全体の血液の約15%が入っている。動脈は、抵抗血管ともよばれる。

 

立った状態のとき、頸部の静脈圧は0mmHgに近くなる。その一方で、足の静脈圧は80~100mmHgになる。このようになるのは、立った状態であるときに重力の影響が大きくなるためである。

 

立っている状態からわずかに歩いた場合、静脈弁の作用、筋肉か静脈のポンプ作用により、足の静脈圧が約25~50mmHgまで下がる。そのため、歩くなどで足を動かすことは、静脈圧を下げるのに有効である。

 

また、安静にしているときの肘の皮静脈の圧は、約4mmHgとなる。

 

 

静脈還流
平均静脈圧の一般的な値は、15mmHgとなっている。また、平均右心房圧の一般的な値は、1~5mmHgとなっている。

 

平均静脈圧と平均右心房圧との差は、右心房に静脈の血液を戻すための力になる。静脈の血液が右心房に戻ることを静脈還流という。

 

立っている場合や運動している場合、平均静脈圧と平均右心房圧との差による力だけでは、静脈の血液を十分に右心房に戻せない。

 

そのため、平均静脈圧と平均右心房圧との差による力に加えて、静脈弁の働きや筋肉のポンプ作用などが行われることが、静脈の血液を右心房に送るのに重要となる。

 

 

血圧と重力
寝ている状態から急に立ち上がると、脳の血液の流れが、重力で一気に下がる。それにより、頭の動脈の血圧が低下し、めまい起こす場合がある。

 

血圧が下がった場合、圧受容器が反射を起こす。それによって、交感神経が働き、末梢神経を収縮させる。こうして、血圧がもとに戻る。

 

・寝た状態から立ち上がる場合
寝た状態から立ち上がる場合、心臓から下の血液が重力に逆らうことになる。そのため、静脈還流は減る。

 

・立った状態から寝た状態になる場合
立った状態から寝た状態になる場合、立っている状態よりも、血液が重力に逆らって流れる場所が少なくなる。そのため、静脈還流は増えることになる。

 

むくんでいる場所があるとき、そこに溜まっている間質液は、少しずつ静脈の中に戻る。そして、血液量と静脈還流が増える。