外呼吸・内呼吸、呼吸中枢、化学的調節

呼吸
生きるためには、呼吸する必要がある。人が生きるために必要とするエネルギーは、1日あたりの平均で約2.400kcalである。

 

呼吸で入った酸素は、体内に取り入れた脂質、タンパク質、糖質といった栄養素を酸化させる。これによって、生きるためのエネルギーがつくられている。また、栄養素を酸化することで、炭酸ガスなどの老廃物が発生する。

 

 

外呼吸・内呼吸
人の呼吸は、外呼吸(肺呼吸)と内呼吸の2つの過程がある。この2つのうち、呼吸器系によって行なわれるのは外呼吸である。

 

・外呼吸(肺呼吸)
空気を吸い込むとき、空気は気道から肺胞に入る。肺胞では、吸い込んだ空気に含まれる酸素を血液に送る。その一方で、血液から二酸化炭素を回収する。こうしたガスの交換を外呼吸(肺呼吸)という。

 

・内呼吸
血液に含まれた酸素は、血管を通して間質液(組織液)に送られる。そして、酸素は間質液を通して細胞に入る。また、細胞に存在する二酸化炭素は、細胞から間質液に入る。そして、血管に流れる血液に含まれる。

 

上記のように、組織の中で行われるガスの交換を内呼吸という。血液と間質液は、外呼吸と内呼吸との間をとりもっている。

 

 

呼吸中枢
呼吸を周期的に続けさせるものに、呼吸中枢がある。呼吸中枢は、呼吸運動を自動で行わせる働きをもつ。さらに、呼吸中枢は、呼吸の調節も行う。また、呼吸中枢は、延髄に存在する

 

呼吸中枢から出ている主な遠心性神経には、胸髄から肋間筋に向かう肋間神経と、頸髄から横隔膜に向かう横隔神経がある。また、大脳皮質から送られる刺激は、呼吸中枢に影響を与える。

 

 

化学的調節、化学受容体
呼吸は、特定の受容体を通して化学的調節を受ける。自身の周りにある体液について、元素やイオンなどの化学的な構成が変わったことに反応する受容体を、化学受容体という。

 

・中枢性化学受容体
脳の細胞外液と脳脊髄液には、中枢性化学受容体という化学受容体が触れている。中枢性化学受容体は、延髄に存在する。

 

細胞外液には、H+(水素イオン)が含まれている。細胞外液に含まれるH+(水素イオン)の濃度が上がると、換気運動が活発になる。また、細胞外液に含まれるH+(水素イオン)の濃度が下がると、換気運動が抑えられる。

 

血液に含まれている二酸化炭素は、簡単に血液脳関門を通り抜けることができる。血液脳関門を通り抜けた二酸化炭素は、脳脊髄液ヘと送られる。

 

血液の中の二酸化炭素分圧が上がった場合、二酸化炭素は脳血管から脳脊髄液の中へと広く散らばる。それによって、H+(水素イオン)が遊離する。そして、中枢性化学受容体が刺激を受ける。

 

H+(水素イオン)が血液脳関門を通り抜けられない場合も、脳脊髄液のpHは、血液に含まれる二酸化炭素によって変わる。それにより、換気の調節が行われる。そして、結果的に血液のpHが調節されることになる。

 

過度な換気が起こっている場合、血液に含まれる二酸化炭素が減る。それにより、脳脊髄液の中の二酸化炭素分圧も下がる。そして、中枢性化学受容体への刺激がなくなり、正しい換気へと回復する。

 

・動脈化学受容体
総頸動脈が分岐する部分には、頸動脈小体がある。また、大動脈弓の上の方と下の方には、それぞれ大動脈体がある。頸動脈小体と大動脈体との2つをまとめて、動脈化学受容体という。

 

動脈化学受容体は、動脈血の二酸化炭素分圧が上がったときや、pHが下がったときには、一定の反応を示す。また、動脈血の酸素分圧が下がった場合、動脈化学受容体はすばやく反応する。

 

動脈血の酸素分圧は、低酸素血症によって50mmHg以下になることがある。この場合、頸動脈小体が最大まで反応を示す。そして、換気を大きく増やす。

 

中枢性化学受容体が二酸化炭素分圧に対する反応の度合いより、動脈化学受容体が動脈血の二酸化炭素分圧に対するの度合いの方が小さい。