呼吸運動、胸腔内圧、呼吸型

呼吸運動
新しい空気を肺に送り続けるには、くり返し換気を行わなければならない。胸郭が換気のために行う運動を、呼吸運動という。

 

 吸息・呼息
息を吸い込む運動を吸息という。また、息を吐き出す運動を呼息という。吸息と呼息とを交互にくり返すことが、呼吸になる。

 

・吸息
吸息する場合、肋骨が外肋間筋の収縮によって引き上げられる。それに合わせて、前の方向に胸骨が押される。さらに、胸骨の下にある肋骨が、左右の方向に押される。

 

それらによって、胸郭の前後と左右の内径が大きくなり、胸腔の容積も大きくなる。

 

さらに、横隔膜が収縮することで、横隔膜のもり上がった部分が下側にへこむ。それにより、胸郭の上下の内径が大きくなり、胸腔の容積が大きくなる。

 

上記により、胸腔の内圧は、大気圧よりも低い圧である陰圧になる。そのため、肺に外の空気が吸い込まれる。これを吸息という。

 

吸息する筋のことを吸息筋という。吸息筋には、横隔膜と外肋間筋があてはまる。

 

吸息筋以外にも吸息を行う筋がある。その筋のことを補助吸息筋という。前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋、胸鎖乳突筋などが補助吸息筋にあてはまる。呼吸困難や深呼吸の場合に、補助呼吸筋が働く。

 

・呼息
吸息で伸ばされた肺と呼吸筋は、呼吸筋がゆるむと、肺の弾性収縮力によってそれぞれ収縮する。それにより、肺の中の空気は外に排出される。これを呼息という。

 

通常の呼息であれば、上記のように完全に受身の作用になる。

 

一方、強く呼息を行なう場合、腹壁筋が収縮し、横隔膜を上に押す。さらに、外肋間筋に拮抗する内肋間筋が収縮し、肋骨を下に引っぱる。これらによって、胸腔の容積が小さくなる。

 

 

肺の弾性・胸腔内圧
胸腔の容積が大きくなることで、肺に空気が送り込まれて肺がふくらむ。これには、肺がもつ弾性と、胸腔の内圧が関係している。

 

肺の組織内には、弾性線維がある。これによって、肺にはつねに内側に収縮しようする力が働いている。

 

胸腔の内圧は、大気圧よりも低い圧である陰圧になっている。また、肺胞の内圧は胸腔の内圧よりも高い。これにより、肺の収縮しようとする力に勝ち、肺をふくらませたままに維持する。

 

胸腔の内圧は、胸腔が広げられることでさらに低くなる。それによって、胸腔の内圧と肺胞の内圧との差がさらに広がる。すると、肺がさらに広げられて、空気が肺胞の中へと送り込まれる。この流れが吸息である。

 

吸息が終了し、胸腔の中が狭くなると、肺を広げる力よりも、肺の弾性による収縮力の方が強くなる。これにより、肺が収縮を起こし、肺胞の中の空気が気道を通って外に排出される。この流れが呼息である。

 

 

呼吸型
横隔膜と肋間筋の働きが中心となって、呼吸が行われる。呼吸の型によっては、横隔膜か肋間筋のどちらか片方を中心とする呼吸になる。

 

安静にしている場合、横隔膜の働きが中心となる腹式呼吸になる。深呼吸、呼吸困難、妊娠中などの場合は、補助呼吸筋も作用する胸式呼吸強制換気になる。

 

 病的呼吸型、異常呼吸型
正常である呼吸の場合、吸息のあとに長めの呼息期が続く。それからある程度の休息期に入り、その後、吸息が再び行われる。

 

このように、呼吸が周期的にくり返される。しかし、呼吸中枢に変化が起こると、呼吸の周期にも変化が生じる。

 

深さ、頻度などがそれぞれ変化した呼吸の型を、異常呼吸型という。異常呼吸型が組み合わさることで、病的呼吸型となる。

 

・深さが変化した呼吸の分類

 

 ・過呼吸
呼吸の深さが大きくなるが、頻度がほぼ変わらない呼吸を、過呼吸という。

 

過呼吸が起こるのは、主に運動の後である。この場合、1回の呼吸で入る空気の量(もしくは出る空気の量)である1回換気量が大きく増える。そして、換気の効率も上がる。

 

 ・減呼吸(浅呼吸)
呼吸が浅くなるが、頻度が変わらない呼吸を、減呼吸(浅呼吸)という。

 

 ・浅促呼吸
呼吸が浅くなり、さらに頻度が増えた呼吸を浅促呼吸という。

 

・頻度が変化した呼吸の分類

 

 ・頻呼吸(速呼吸)
呼吸の深さが変わらず、1分間に24回以上の頻度のものを、頻呼吸(速呼吸)という。

 

 ・徐呼吸(遅呼吸)
呼吸の深さが変わらず、1分間12回以下の頻度のものを、徐呼吸(遅呼吸)という。

 

・周期性呼吸、非周期性呼吸
周期的に行われる呼吸を周期性呼吸という。また、周期性がみられない呼吸を非周期性呼吸という。

 

 [チェーン・ストークス呼吸]
チェーン・ストークス呼吸の場合、周期性呼吸にあてはまるが、数秒~20秒以上の無呼吸が続く。そして、深い呼吸が少しずつ始まって過呼吸になる。その後、徐々に浅い呼吸に変わっていき、最終的に無呼吸になってしまう。

 

 [クスマウル呼吸]
クスマウル呼吸の場合、遅くて異常に深い呼吸が続きながら現れる。

 

 [ビオー呼吸]
ビオー呼吸の場合、無呼吸期から急に頻呼吸に移り変わる。さらに、これが周期的にくり返される。呼吸の深さは変わらない。