酸塩基平衡とその異常

酸塩基平衡
血液のpHは7.4(7.35~7.54)となっている。そのため、弱アルカリ性である。血液のpHを7.4(7.35~7.54)にすることは、体の機能と生命を保つのに大切なものとなっている。

 

また、酸性アルカリ性の両方の物質が、体内に含まれている。そして、体にある調節機能によって、酸性とアルカリ性とのバランスが保たれる。

 

・酸と塩基
水素イオン(H+)をつくり出すものをという。また、水酸化イオン(OH)をつくり出すものを塩基という。

 

 酸塩基平衡の仕組み
酸塩基平衡を正しく維持する作用には、以下のものがある。

 

 ・肺と腎臓による排出の作用

 

 ・血液自身がもつ、血液のpHを正しい状態に維持する作用(これを緩衝作用という)

 

肺は、血液に含まれる酸の排出を行う。その働きは、腎臓の約200倍である。

 

血液で生じた酸を中和して、pHを一定の値に維持する物質には、タンパク質、リン酸塩、重炭酸塩(BHCO3)が存在する。

 

重炭酸塩は、炭酸水素塩ともいう。重炭酸塩の化学式「BHCO3」のBとは、炭酸水素イオンと結びつく陽イオンを示す。

 

重炭酸塩は、すぐに酸と結合して中和することができる。また、重炭酸塩は、酸の中和を行う物質のなかでも、その中心となる存在でもある。また、ナトリウムになっている重炭酸塩を、炭酸水素ナトリウム(NaHCO₂)という。

 

酸である乳酸(LH)に、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)が働いた場合、中性塩(NaL)と弱酸性の炭酸(H₂CO3)が生成される。これを化学式で表すと、以下のようになる。

 

 LH + NaHCO3 → NaL + H₂CO3

 

炭酸(H₂CO3)は、水(H₂O)と二酸化炭素(CO₂)とに分解する。二酸化炭素は、肺によって外に排出される。これを化学式で表すと、以下のようになる。

 

 H₂CO3 → H₂O + CO₂

 

血液に含まれる炭酸からは、上記のように二酸化炭素が発生する。その二酸化炭素は、呼吸により肺から排出される。その結果、酸の処理が行われる。

 

二酸化炭素が血液中に多く存在する場合、それが呼吸中枢に刺激を与える。すると呼吸数が増え、二酸化炭素の排出が行われる。

 

血液に含まれるアルカリが多くなると、呼吸数が減る。そして、二酸化炭素の排出が抑えられる。

 

腎臓の場合は、以下のような働きで、酸塩基の調節に関わっている。

 

 ・酸性もしくはアルカリ性の重炭酸塩やリン酸塩を腎臓から排出する

 

 ・腎臓で生成されたアンモニアを血液中に送る

 

尿のpHは、腎臓から酸が多く送られると酸性、アルカリが多く送られるとアルカリ性になる。酸の排出が腎炎によって悪くなると、アシドーシスを起こす場合がある。

 

血液のpHは、上記のメカニズムによって、正常の範囲におさめられる。また、肺による呼吸性の作用は、1時間以内で行われる。その一方で、腎臓による働きは、24~48時間もかかる。

 

 

酸塩基平衡の異常
血液の酸塩基平衡の異常は、肺胞換気による呼吸性のものと、その他の腎臓が主になる代謝性のものとに、大きく分けられる。

 

呼吸性のものは、さらに以下のように分けられる。

 

 ・二酸化炭素が肺胞の低換気によって増え、アシドーシスを起こす場合

 

 ・二酸化炭素が過換気によって減り、アルカローシスを起こす場合

 

代謝性のものには、以下のものなどがあげられる。

 

 ・塩基が大きく減って代謝性アシドーシスとなる場合など

 

 ・体液に含まれる塩基を消失し、代謝性アルカローシスとなる場合など

 

 ・病的に過剰な酸が体液の中でつくられ、代謝性アルカローシスとなる場合など

 

 代謝性因子
炭酸水素イオン(HCO3-)の増減は、代謝性因子の目安とされる。

 

炭酸水素イオンが24mEq/リットル以下となると、代謝性アシドーシスとなる。30mEq/リットル以上となる場合は、代謝性アルカローシスとなる。