心拍数、心拍出量

心拍数
正常な状態の人の心拍数は、成人男性で65~72回/分、成人女性で70~80回/分となっている。性別以外でも、体質、環境、年齢、運動力、体調などで、心拍数は変わってくる。

 

心拍数は座っているときよりも、立っているときの方が多くなる。また、体温が1度上がると10~20回/分ほど心拍数が増える。

 

胎児や新生児の心拍数は、130~145回/分であり、乳児の心拍数は、110~130回/分である。また、児童の心拍数は80~90回/分となっている。老人は、成人と比較して心拍数が少ない場合が多い。

 

 自律神経の働き
自律神経は、交感神経と副交感神経(迷走神経)とに分けられる。これらの神経は、心臓の支配を行う。

 

・陽性変時作用
交感神経には、心拍数を増やす働きがある。この働きを、陽性変時作用という。運動などで交感神経が興奮すると、心拍数が増える。

 

・陽性変時作用
副交感神経には、心拍数を減らす働きがある。この働きを、陰性変時作用という。休んでいるときでは副交感神経の興奮によって、心拍数が減る。また、1日の中で心拍数が1番少なくなるのは、眠っているときである。

 

 

心拍出量(分時拍出量)
心拍1回あたりで左心室から送り出される血液の量を1回拍出量(SV)という。成人の1回拍出量は約70ミリリットルとなっている。

 

心拍数を70回/分とした場合、1分間のうちに拍出されるすべての血液の量は、4.900ミリリットルにもなる。この血液の量を心拍出量という。また、正常な心拍出量は、4.0~8.0リットル/分である。

 

 運動時における心拍出量
運動時では、心拍数、1回拍出量、心拍出量がそれぞれ増える。

 

心拍数が120回/分以上になる運動では、1回拍出量は100~200ミリリットルに増える。この状態からさらに激しい運動をしても、1回拍出量の増加はほぼ起こらない。

 

上記の状態に加えて心拍数の増加がある場合、心拍出量が20~30リットル/分に増加することがある。また、体の組織の酸素消費量は、運動時に大きく増える。このことから、運動時には、必要な血液循環の量が多くなる。

 

・運動時の血液循環
血液循環が運動時に多くなるのは、次のことが起こるためである。

 

 ・心臓の交感神経がより活発に働く

 

 ・深くて速い呼吸をくり返すことで、大静脈の陰圧が増加し、心臓に血液を送る働きが活発になる

 

 ・静脈の血行が、筋肉の収縮によって促進され、心臓に戻る血液の量が増える(これを筋肉ポンプ作用という)

 

上記のことによって、血液が多く心室に流れ込むことになる。すると、心筋の収縮が強められ、1回拍出量が増加して血圧が上がる。これにより、循環がより行われやすくなる。

 

しかし、心拍数だけを150回/分以上などに大きく増やしても、筋肉ポンプ作用が強まらなかったり、心臓に戻る血液が増えなかったりした場合、心室拡張期が極端に短くなる。

 

すると、拡張末期での心質内血液量が減り、結果的に心拍出量も減少する。

 

寝ている時間が普段から長かったり、ほとんど運動しない生活が続いていたりした場合、1回拍出量の減少が起こる。

 

心室の拡張末期圧と心拍出量
健康な人の場合、心室の拡張末期には心室の中が多くの血液で満たされる。そして、心内圧が増加するに従って、心筋の収縮力も増加する。その結果、1回あたりの心拍出量が増える。

 

心不全のように心筋の収縮力が低下した場合、拡張末期における心室の広さが大きくなる。その結果、心内圧が上がる。

 

しかし、心収縮力は、心内圧の上昇ほどには強くならない。そのため、1回あたりの心拍出量はほとんど増えない。

 

上記の状態で、1回あたりの心拍出量を増やす方法には、カテコールアミンやジギタリスなどの投与、交感神経に刺激を与えることがあげられる。