咀嚼、唾液の作用・分泌、嚥下 − 健康と医療の情報局

 

咀嚼、唾液の作用・分泌、嚥下

 

咀嚼(そしゃく)
口に入ったものをかみくだくことを、咀嚼(そしゃく)という。咀嚼は、上顎に対して上下と左右に下顎を動かして行われる。このとき、口唇、舌、頬などが補助的に運動する。

 

咀嚼運動を主に支配するのは、三叉神経の第3枝の下顎神経である。また、舌の運動を支配するのは舌下神経である。さらに、頬の運動を支配するのは、顔面神経である。

 

咀嚼運動、舌の運動、頬の運動は、どれも随意運動にあてはまる。しかし実際のところ、食べ物が口に入ったときには、ほぼ無意識で反射的に、咀嚼運動、舌の運動、頬の運動がそれぞれ行われる。

 

口腔の痛み、むし歯などの歯の障害、咀嚼(そしゃく)に関わる神経や筋の障害などがあると、うまく咀嚼を行うことができない。

 

咀嚼をしっかり行えないまま食物を飲み込んでしまうと、食物がしっかりと消化されない。この場合、消化管に異常が起こる。

 

 

唾液(だえき)の分泌・作用
唾液(だえき)は、耳下腺、顎下腺、舌下腺の3つの唾液腺から、主に分泌される。また口腔内には、口唇腺、舌腺、頬腺などの粘液腺(小口腔腺)がある。粘液腺からも、少量の唾液が分泌される。

 

唾液は、1日あたり約1.000〜1.500ミリリットル分泌される。また、唾液のpHは6〜7であり、ほとんど中性である。唾液にはさまざまな働きがあり、そのなかで主なものを以下に示す。

 

 ・消化作用

 

 ・粘膜を保護する

 

 ・食べ物をやわらかくする

 

 ・水代謝を調節する

 

 ・口腔内を湿らせる

 

 ・口腔内を清潔にする

 

上記のうち、とくに中心となる働きが、消化作用である。

 

 消化作用
唾液(だえき)は、デンプンの消化、嚥下しやすくするために食べ物をやわらかくするといった作用を、主に担当している。

 

唾液の約99%以上が水で構成されている。水以外の残りの1%以下は、固形の成分になっている。この固形成分では、粘液とプチアリンが、それぞれ主な成分となっている。

 

粘液の主な働きは、食物をやわらかくすることである。一方、プチアリンの主な働きは、デンプンの消化である。プチアリンに消化されたデンプンは、マルトース(麦芽糖)やテキストリンに変化する。

 

プチアリンがもつ消化作用のうち、そのほとんどは口腔内だけでなく、胃の中にも続いて働く。強い酸性である胃液が消化作用を行うと、プチアリンの消化作用はなくなる。

 

また、口腔内では、脂肪やタンパク質の消化が起こらない。

 

 唾液分泌のメカニズム
神経によって、唾液(だえき)の分泌は調節されている。橋と延髄に存在する上唾液核下唾液核が、唾液分泌の調節の中枢になっている。唾液の分泌のメカニズムは、脳期味覚期胃腸期の3つの期に分かれている。

 

・脳期
食べ物を見る、においをかぐ、イメージするなどの刺激による条件反射で、唾液の分泌がおこる。

 

・味覚期
口腔内に食べ物が入り、咀嚼(そしゃく)が始まったり食べ物が舌などに触れたりした場合に、唾液の分泌が開始される。このときの唾液の分泌は、条件反射によるものではない。

 

・胃腸期
胃腸に食べ物が入ったときに、唾液の分泌が起こる。このときの唾液の分泌は、迷走神経が関わる反射によって起こるものである。

 

 

嚥下(えんげ)
食べ物が咀嚼(そしゃく)され、唾液と混ぜられてやわらかくなると、その食べ物は舌の上に集まって、食塊(しょくかい)となってから飲み込まれる。このことを、嚥下(えんげ)という。

 

 嚥下運動
嚥下運動は、口腔期(第1期)、咽頭期(第2期)、食道期(第3期)の3つの期に分かれて行われる。

 

・口腔期(第1期)
口腔期は、食べ物が口腔から咽頭に到達するまでの間となっている。口腔期での運動は随意運動である。ここでは、食べ物を舌の運動で咽頭腔へと押す。

 

・咽頭期(第2期)
咽頭期は、食べ物が咽頭から食道の入口に到達するまでの間となっている。この運動は不随意運動である。ここでは、咽頭に食べ物が触れたときに反射的に運動が起こる。

 

食べ物が咽頭に触れると、咽頭の後ろ側の壁に軟口蓋(なんこうがい)が押し当てられる。そして、咽頭鼻部と口腔との間が閉じられる。

 

さらに、舌根が上がることで喉頭蓋が塞がり、咽頭筋が収縮を起こす。これらにより、食べ物は食道へと送られて、気管には入らない。

 

また、このときには声門が閉じられ、少しの間だけ呼吸運動が止められる。これを嚥下性無呼吸という。

 

・食道期(第3期)
食道期は、食べ物が食道の入口から胃の噴門に到達するまでの間となっている。この運動は、不随意運動である。

 

さまざまな筋の働きが組み合わさって、嚥下(えんげ)の作用が行われる。この作用の調節は、延髄にある嚥下中枢だけで行われる。

 

 ・胃に到達する時間
食べ物などの固体を嚥下(えんげ)した場合、胃に到達する時間は約4〜5秒である。液体を嚥下(えんげ)した場合、胃に到達する時間は約1秒である。