胃の蠕動運動・運動調節


胃は食べ物を溜めて置く場所である。さらに、胃は食べ物を消化してお粥(おかゆ)のようにし、十二指腸へと送る働きをもつ。

 

 糜粥(びじゅく)
食べ物が、胃の消化によってお粥(おかゆ)のようになったものを糜粥(びじゅく)という。胃の蠕動運動と胃液の働きによって、食べ物を糜粥にすることができる。胃液には、酵素、塩酸(胃酸)、無機塩類、ムチン(粘液)などが含まれている。

 

胃酸(塩酸)には、胃に入ってきた細菌が増えないようにする作用と、ペプシノーゲンを活性化してペプシンに変える作用をもつ。

 

 

胃の蠕動運動
胃が行う蠕動運動(ぜんどううんどう)は、胃体部の真ん中のやや下側から開始される。そして、幽門部の方へと運動の波が伝わっていく。

 

胃の蠕動運動は、1分あたり3~4回行われるのが普通である。1つの運動の波が、始まってから幽門部に伝わるまでにかかる時間は、10~30秒ほどである。

 

幽門が閉じた状態で、胃が蠕動運動をすることで、胃液と食べ物とがしっかりと混ざり、糜粥(びじゅく)ができる。

 

 胃に入ったものの運搬
胃の蠕動運動が強くなってくると、胃の内圧が高められていく。胃の内圧が、十二指腸の内圧と幽門括約筋の圧力の合計より高くなると、胃の中に入ったもの(胃の内容物)は、十二指腸へと運搬される。

 

普通食を摂っている場合、胃に入ったものの運搬が始まるのは、食後約10分頃である。そして、胃に入ったものすべてが十二指腸に送られるのにかかる時間は、3~6時間ほどである。

 

胃に入ったものの運搬時間には、胃に入ったもの自身の状態や性質などが深く関係している。

 

水を飲んだ場合、その水は、ほぼそのまま胃から十二指腸へと直接流れ込む。高張の液体の場合、一度胃液で薄められて等張にされてから、十二指腸へと流れる。

 

三大栄養素のうち、一番早く運ばれるのは糖質である。タンパク質が運ばれる時間は、糖質の2倍もかかる。脂肪は、運ばれるのに一番時間がかかる。さらに、胃の運動は脂肪によって抑えられる。

 

そのため、脂肪を多く含む食事の後は、胃もたれを感じることが多い。

 

 

胃が行う運動の調節
胃の運動の調節は、さまざまな仕組みによって行われる。

 

 体液性調節
十二指腸に脂肪や酸性液が運ばれると、十二指腸粘膜でエンテロガストロンというホルモンが産生される。エンテロガストロンは、胃の運動を抑える働きがあり、血液の流れに乗って胃に送られる。

 

 神経性調節
胃の運動と緊張は、迷走神経(副交感神経)を刺激した場合に亢進される。逆に、交感神経を刺激した場合は、胃の運動と緊張が抑えられる。

 

迷走神経が切断された場合、胃の運動と緊張が抑えられるが、胃に痛みを感じなくなり、胃液の分泌が減ることになる。

 

 その他の調節
入ってきた食べ物などで、十二指腸や空腸の壁が伸び広げられた場合、胃の運動が反射的に弱まる。これは、腸胃抑制反射によって行われる調節である。

 

胃の運動と胃液分泌の調節には、十二指腸粘膜に伝えられる刺激が関わっている。