胃液の分泌・成分

このページでは、「胃液の分泌機能」「胃液の成分とその作用」「胃液分泌のメカニズム」「胃液分泌の促進と抑制」について、それぞれ解説していく。

 

胃の分泌機能と胃液

胃液に含まれるものには、塩酸(胃酸)、粘液ペプシンなどがある。胃液の分泌量は、1日あたり1.000~3.000ミリリットルである。

 

胃の粘膜(粘膜固有層)には、胃液の分泌を行う細胞がある。胃液の分泌を行う胃腺は、噴門腺、胃底腺、幽門腺の3つの場所に分けられている。

 

それぞれの胃腺の名称・場所・働き

(↓ 横にスクロール可 ↓)

胃腺の名称 場所 腺細胞 分泌するもの 働き
噴門腺 噴門部 部副細胞 粘液 粘膜を潤して保護する
胃底腺

胃底部

 

胃体部

主細胞 ペプシノーゲン タンパク質の消化
副細胞 粘液 粘膜を潤して保護する
壁細胞 塩酸(胃酸)

酸性化タンパク質の消化の手助け

 

ペプシノーゲンを活性化してペプシンにする

幽門腺 幽門部 副細胞 粘液 粘膜を潤して保護する

(↑ 横にスクロール可 ↑)

 

胃液の成分とその作用

胃液には、ペプシン塩酸(胃酸)、粘液、糖タンパク質である内因子などの成分が存在する。それらのうち、ペプシンと塩酸の2つは、胃液の主要な成分となっている。また、胃液のpHは1.0~2.0となっている。

 

ペプシン

胃底腺にある主細胞からは、ペプシノーゲンが分泌される。胃液によってペプシノーゲンが活性化されると、そのペプシノーゲンはペプシンに変わる。

 

ペプシンは酵素であり、タンパク質を分解する働きをもつ。タンパク質がペプシンの働きによって、ある程度分解されると、ポリペプチドやペプトンになる。

 

塩酸(胃酸)

胃底腺の壁細胞からは、塩酸(胃酸)が分泌される。塩酸には、以下のような働きがある。

  • 殺菌作用によって、十二指腸に細菌が入らないようにする
  • ペプシノーゲンを活性化し、タンパク質を消化できるペプシンに変える

塩酸が異常に多く分泌される状態を、胃酸過多(胃酸分泌過多)という。胃酸過多は、胃潰瘍など、消化管での潰瘍の場合に起こることがある。

 

胃酸過多の主な症状は、胃痛やげっぷなどである。また、塩酸の分泌は、加齢や悪性貧血などによって少なくなる場合がある。

 

粘液

胃粘膜の副細胞によって、粘液の分泌が行われる。ここで分泌される粘液には、胃の内側をおおって粘膜を守る働きがある。また粘液の働きによって、タンパク質の分解を行うペプシンが、胃の粘膜を消化しないようにしている。

 

内因子

胃液に含まれる内因子は、糖タンパクの一種である。内因子は、小腸でのビタミンB12の吸収に不可欠なものである。内因子が足りない場合、それによって悪性貧血が引き起こされる。

 

胃液分泌のメカニズム

胃液分泌は、食事のときに行われる。胃液の分泌のメカニズムは、頭相、胃相、腸相の3つの時期に分けられている。

 

頭相

食べ物を見る、においをかぐ、食べるなどによって刺激が発生する。その刺激は大脳に働き、迷走神経から胃腺に刺激が送られる。

 

それによって、胃液の分泌が行われる。また、頭相と同じメカニズムが、空腹のときにも起こる。これは、胃液の基礎分泌にあてはまる。

 

胃相

胃に食べ物が入ることで、胃壁が刺激される。それによって、胃液の分泌が行われる。

 

また、食べ物のなかに消化されたタンパク質であるアミノ酸やペプチドが含まれていた場合、それらの働きによって、胃粘膜からガストリンというホルモンが生成される。

 

ガストリンは血液に送られ、体中をめぐってから胃に戻る。そして、胃腺に刺激を与え、胃液の分泌を促進する。

 

腸相

十二指腸の粘膜に、タンパク質を消化してできたものが触れた場合、胃液の分泌が刺激を受ける。十二指腸に脂肪が送られた場合は、胃液の分泌と胃の運動が抑えられる。

 

胃液分泌の促進と抑制

胃に入ったものの性質や種類の他、感情の変化などが、胃液の分泌に関わっている。脂肪を多く含む食べ物は、エンテロガストロンによって、胃の運動と胃液の分泌の両方を抑える。

 

迷走神経が興奮することで、神経終末からアセチルコリンが出る。アセチルコリンにも、胃液の分泌を促す働きがある。

 

アセチルコリンが受容体に結合しないようにする物質である拮抗薬として、アトロピンがある。アトロピンは胃液の分泌を抑える働きをもつ。

 

胃液の分泌を刺激する物質のうち、強い作用をもつものとしてヒスタミンがある。また、胃液の分泌を促す飲み物には、お茶やコーヒーなどがあてはまる。