胆汁の分泌・成分・色素

胆汁
食事が始まったとき、胆嚢(たんのう)から十二指腸に胆汁が送られる。食事を終えてから約30分後に、消化管ホルモンであるコレシストキニンが十二指腸の粘膜でつくられる。

 

コレシストキニンは、血液に送られて胆嚢に到達する。胆嚢は、コレシストキニンによって収縮を促される。

 

 胆汁の生成
胆汁をつくるのは、肝細胞である。つくられた胆汁は、胆管に運ばれる。

 

 ・利胆作用
刺激を肝細胞に与え、胆汁の生成を高めさせることを、利胆作用という。胆汁に含まれる成分には、胆汁酸がある。胆汁酸のもつ利胆作用は、より強力である。

 

 胆汁の分泌
胆汁は、肝臓で分泌される。分泌された胆汁は胆管を通り、胆嚢(たんのう)に一時的に蓄えられる。胆嚢に入った胆汁は濃縮され、4~10倍の濃度になる。

 

濃縮された胆汁に、胆嚢壁から分泌される粘液が少し混じる。それによって、胆嚢胆汁ができる。

 

十二指腸の中に脂質の多い食べ物が入ったり、迷走神経がより強く緊張したり、胆汁が胆嚢内に満ちたりした場合、胆嚢の収縮が始められる。

 

十二指腸の粘膜に、脂肪酸が当たったときにつくられるコレシストキニンは、胆嚢の収縮に1番重要なものである。また、十二指腸に入った食べ物自体も、胆嚢の収縮に重要なものの1つである。

 

コレシストキニンは、血流を通って胆嚢(たんのう)に到着する。コレシストキニンによって、胆嚢壁が収縮し、大十二指腸乳頭のまわりにあるオッディ括約筋がゆるむ。そして、十二指腸の中に胆汁が送り込まれる。

 

 ※大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)
胆嚢から出ている胆嚢管と肝臓から出ている肝管が合流した総胆管と、膵臓から出ている主膵管の2つの導管合流し、十二指腸に開いている場所を大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)という。

 

 胆汁の成分
胆汁の色は黄色であり、アルカリ性である。胆汁は、1日あたり500~800ミリリットル分泌される。胆汁に含まれる成分の中で主なものは、胆汁酸胆汁色素脂質である。胆汁は、消化酵素をもっていない

 

 胆汁の作用
胆汁は、脂肪の消化と吸収を促す働きがある。その働きは、おもに胆汁酸によって行われる。

 

 胆汁酸
胆汁酸は、タウリンとグリシンの2つのアミノ酸と、コレステロールに由来するコール酸とデオキシコール酸の2つの、合計4つで構成されている化合物である。

 

また、胆汁酸はタウロコール酸やグリココール酸の状態で体に含まれているのが一般的である。脂肪の消化と吸収には、腸管から送り込まれる胆汁酸が関与する。

 

・胆汁酸がもつおもなはたらき
胆汁酸がもつ働きのうち、主なものを以下に示す。

 

 ・脂肪の消化を促す
表面張力を弱くし、脂肪の乳化を行う。また、脂肪滴という器官の表面積を広げ、リパーゼが作用しやすいようにする。

 

 ・脂肪の吸収を促す
胆汁酸が脂肪酸と結合して、水溶性の物質をつくる。それによって、脂肪酸を吸収しやすくする。

 

 ・胆汁の産生を刺激する
腸管によって吸収され、肝臓に戻ったところで作用を起こす。

 

 ・ビタミンの吸収を促す
脂肪性ビタミン(ビタミンA、D、E、Kなど)の吸収を促す。

 

 ・腸管内の腐敗と発酵を防ぐ
脂肪の消化を促すことで、糖質とタンパク質がスムーズに消化できるようにする。

 

 カルシウムや鉄の吸収の促進
胆汁酸によって、カルシウムや鉄の吸収が促される。

 

 胆汁色素
赤血球に含まれるヘモグロビンが壊されたもので、胆汁色素ができている。胆汁色素には、ビリルビンビリベルジンの2つが存在する。

 

胆汁に含まれた胆汁色素は、腸内細菌の働きでウロビリノーゲンとなる。ウロビリノーゲンのうち、一部は便に色をつけるウロビリンに変わる。もう一部は腸管から血液に送られて再び胆汁に入る。

 

 胆汁に含まれる脂質
胆汁に含まれる脂質には、コレステロール脂肪酸レシチンなどがある。

 

胆汁にあるレシチンと胆汁酸との量の比率によって、その胆汁に溶け込んでいるコレステロールの量が変わる。この比率が乱れると、胆汁からコレステロールが出る。

 

比率の乱れによって胆汁から出たコレステロールは、胆石となる。