尿量と抗利尿ホルモン、腎機能、腎疾患

尿量と抗利尿ホルモン
尿量は、1日あたりで約1リットル(500~2.000ミリリットル)となっている。また、尿量が、1日あたり3リットルを超えることを多尿という。

 

1日あたり400~500ミリリットル以下の尿量の場合、それを乏尿という。また、1日あたり100ミリリットル以下の尿量の場合、それを無尿という。

 

水の1日あたりの摂取量は、個人ごとに違いが大きい。そうであっても、健康な人の体液量そのものは、あまり変わらない。

 

上記のようになる理由としては、下垂体後葉からの抗利尿ホルモン(ADH)の分泌量が、水の摂取量に応じて調節されることがあげられる。

 

体内に水が過剰に存在する場合、体液が薄まる。そして、体液の浸透圧が低下する。

 

すると、浸透圧が下がったことを、視床下部に存在する神経細胞(ニューロン)が感知する。その働きによって、抗利尿ホルモンの分泌が抑えられる。

 

抗利尿ホルモンは、尿細管の1つである集合管に働く、そして、水の再吸収を促す働きをもっている。抗利尿ホルモンが減ることで、水の再吸収が抑えられる。その結果、低い浸透圧の尿が数多く生成される。

 

体内に存在する水の量がわずかになった場合、抗利尿ホルモンの分泌が高められる。それにより、高い浸透圧をもつ尿(濃縮された尿)が、少しだけ生成される。

 

腎臓の髄質内層の浸透圧は、皮質の浸透圧の約4倍の高さである。それにより、浸透圧の高い髄質内層を尿が通行する際、髄質の方に尿細管の中の水が引き込まれる。そのため、さらに尿の濃度が上昇する。

 

こうして、血漿の約4倍に濃縮された尿が、人の腎臓によってつくられる。

 

・多尿の例
糖尿病の場合、尿細管の内液に含まれるグルコースの濃度が高いことで、浸透圧が高められる。それによって、水の再吸収が抑えられて多尿が起こる。

 

タンパク質濃度の高い輸液である高タンパク経管栄養を行った場合では、尿量がタンパク質によって増加する。そのため、多尿となる。

 

また、抗利尿ホルモンの生成や分泌が異常に抑えられることで、尿崩症が引き起こされる。尿崩症の場合にも、多尿が起こる。

 

・乏尿の例
腎臓の機能が急激に下がる急性腎不全、水分欠乏による脱水などによって、乏尿が引き起こされる。

 

体内で余った物質(ナトリウム、カリウム、窒素化合物など)、いらない代謝物の排出には、400~500ミリリットル/日以上の尿量が必要になる。

 

生命に危険が及ばないためには、1日あたり最低でも400~500ミリリットルの尿量が産生されなくてはならない。

 

腎機能
腎臓は、さまざまな機能をもつ。腎臓では、体に必要となる物質の再吸収が行われる。また、腎臓は、血漿成分のなかで、余ったものを排出する。それにより、その血漿成分を正常な状態に維持する。

 

腎臓では、レニン、エリスロポエチン、プロスタグランジンなどがつくられる。それにより、ビタミンDの活性化が行われる。

 

腎臓では、水の排出の調節が行われる。それにより、血液の量が一定の状態に維持される。また、腎臓では、体の中の有害物質やいらない代謝物が、尿として排出される。

 

腎疾患
腎疾患のうち、急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、腎盂腎炎、慢性腎不全、ネフローゼ症候群について、それぞれ解説する。

 

 急性糸球体腎炎
急性糸球体腎炎の場合、特定の細菌の感染などに続き、病的な変化が糸球体に引き起こされる。すると、赤血球やタンパク質(アルブミン)が濾過される。その結果、血尿タンパク尿が排出される。

 

尿の中へとタンパク質を消失した場合、血液に含まれるタンパク質が足りない状態となる。それによって、低タンパク血症が起こり、糸球体濾過値が下がる。

 

そして、水やナトリウムが溜まり、浮腫が引き起こされる。この場合、高血圧が現れることがある。

 

 慢性糸球体腎炎
慢性糸球体腎炎の状態では、血尿、タンパク尿、浮腫、高血圧などが現れる。

 

 腎盂腎炎
腎盂腎炎では、腎盂で起きた細菌感染による炎症が、腎実質にまで広がっている。

 

 慢性腎不全
慢性糸球体腎炎、腎盂腎炎などが進んだり悪化したりする場合、慢性腎不全が引き起こされる。

 

慢性腎不全では、ネフロンが壊されて、ネフロンの数が減少する。その結果、いらない代謝物が溜め込まれるようになる。それにより、クレアチニンや血中尿素窒素が増加し、尿の量が減少する。

 

慢性腎不全が悪化した場合、腎移植や血液透析などの治療を受けなければならなくなる。

 

 ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群の場合、糸球体が壊された状態になっている。ネフローゼ症候群では、タンパク尿、乏尿、浮腫、高脂血症などが現れる。

 

また、膠原病や糖尿病などの特定の病気に合併する形で、ネフローゼ症候群が起こる場合がある。