太りやすさは遺伝する?

世の中には「肥満は遺伝する」「親が太ければ、子供も太くなる」といった考え方があります。たしかに、消費されるエネルギーの量は、親からの遺伝にある程度関係しています。

 

それではまず、私たちの体が、どのように体内に含んでいる脂肪をエネルギーとして消費するのかについて、述べていきます。

 

エネルギー消費の仕組み

私たちの体には、副腎という器官があります。副腎のうちの髄質の部分(副腎髄質)からは、アドレナリンというホルモンが分泌されます。

 

アドレナリンは、脂肪の分解を行ってエネルギーをつくる作用をもっています。アドレナリンのこの作用によって、余計な脂肪が分解されれば、体がやせることになるわけです。

 

私たちの体内の一部で、エネルギーが必要となった場合、その部分に存在する細胞は、血液中に存在する糖質や脂肪酸をエネルギー源とします。このとき、まずは糖質がエネルギー源として利用されます。

 

なぜ糖質が優先されるのかといいますと、脂肪酸に比べて糖質の方がエネルギーに変えやすいためです。そして、血液中の糖質だけでは十分にエネルギーを得られない状況になったときに、ようやく脂肪酸がエネルギー源として利用されるようになります。

 

脂肪酸がエネルギー源として利用されるようになると、体は、脂肪細胞に溜め込まれている中性脂肪を分解します。

 

分解された中性脂肪は脂肪酸となり、血液中に送られます。このようにして、体は、血液中に含まれる脂肪酸の量を一定の状態に維持しようします。

 

ホルモン感受性リパーゼとその個人差

また、脂肪細胞に溜め込まれている中性脂肪が分解される際、酵素の1種であるホルモン感受性リパーゼの作用が起こります。ホルモン感受性リパーゼは、アドレナリンの作用によって、活発な状態になります。

 

ホルモン感受性リパーゼが活発な状態になることで、効率的に次々と脂肪が分解されるようになります。ホルモン感受性リパーゼが活発でなくなってくると、脂肪があまり分解されなくなっていきます。

 

このような形で、アドレナリンは、脂肪の分解に関わっているのです。アドレナリンの分泌が促進されることで、ホルモン感受性リパーゼがより活発になり、結果的に脂肪の分解も促進されることになるわけです。

 

ホルモン感受性リパーゼが、どのくらいアドレナリンに反応を起こしやすいかは、人によって異なります。そして、この「反応の起こしやすさの度合い」は、3種類の方に分類され、それぞれTT型・TA型・AA型といいます。

 

これらの型のうち、TT型が最も反応が起こりやすいものであり、最も一般的な型となっています。また、TA型とAA型は、それぞれTT型より反応が起こりにくくなっており、さらに、AA型はTA型よりも反応が起こりにくい型となっています。

 

TT型に比べてTA型は、消費カロリーが約190キロカロリー少ないとされています。また、TT型に比べてAA型は、消費カロリーが約220キロカロリー少ないとされています。このように、TA型やAA型の人は、TT型の人に比べてやせにくいということになります。

 

 

実際に、自分が3種類の型のどれなのかを知る方法としては、「毛根の解析」があります。ただ残念ながら、毛根の解析は、一般の方が一人で行うのは難しいです。

 

ただ、おおよその判断方法になるものが1つあります。友人や知り合いなどと食事に行った際に、「食事の量が同じなのに他の人よりも自分の方が太っている」と感じた場合、「もしかしたらTA型やAA型かもしれない」と考えてください。

 

TA型やAA型の人は、たしかにTT型の人よりもやせにくい傾向にはあります。しかし、裏を返せば、TT型の人に比べてTA型やAA型の人の方が、食糧危機に強く、TT型の人よりも生き残りやすいといえます。

 

また、TA型やAA型の人であっても、正しい方法でダイエットを行えば、もちろんやせやすい体をつくれますし、実際にやせることも十分に可能です。逆に、TT型の人であっても、食べすぎを起こしてしまえば太ってしまうわけです。

 

ダイエット中の方であれば、自分がどのTT型・TA型・AA型のどの型なのかは深く考えずに、正しい努力を続けていくことに集中していただきたいと思います。