マクロミネラルの種類・作用

ミネラル(無機質)の種類
生体には、さまざまな元素が含まれている。そのうち、酸素(O)、水素(H)、炭素(C)、窒素(N)以外のものをまとめて、ミネラル(無機質)という。生体に含まれるすべてのミネラルの割合は、体にある元素全体の約4%である。

 

ミネラルを大きく分類すると、マクロミネラルミクロミネラルとの2種類に分けられる。

 

※ミクロミネラルについては、「ミクロミネラルの種類・作用」のページで解説している。

 

マクロミネラルの種類
マクロミネラルにあてはまるものとして、以下のものがあげられる。

 

カルシウム(Ca)、リン(P)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、塩素(Cl)、硫黄(S)

 

 カルシウム(Ca)
カルシウムは、小魚、大豆、種実などの食品に多く含まれている。マクロミネラルにあてはまる。

 

生体に含まれるミネラルのほとんどを、カルシウムが占めている。カルシウムのうち、約98%が骨や歯に含まれており、残りは細胞質(約1%)や血液(約0.1%)に含まれている。

 

・カルシウムの作用
血液のカルシウムの濃度が低い場合、骨に含まれているカルシウムの一部が血液へと送られる。

 

血液に含まれるカルシウムの濃度の調節に関わるものとして、骨、腸、腎臓、ビタミンD3、カルシトニン、PTH(副甲状腺ホルモン)などがあげられる。

 

また、カルシウムは、骨を構成する成分となることの他に、いくつか関わるものがある。それには、筋の収縮、神経における刺激の伝達、細胞での情報の伝達、血液の凝固、酵素の活性化、体液におけるpHの調節などがあげられる。

 

・カルシウムの欠乏症
体内のカルシウムが足りなくなった場合には、筋肉が弛緩する(ゆるむ)、神経の興奮性が強まるといったことが起こる。

 

カルシウムの欠乏症のうち、成人に起こるものとして、骨粗しょう症や骨軟化症などの疾患がある。また、幼児期に起こるものとして、くる病という疾患がある。

 

・カルシウムの過剰症
カルシウムを多く摂りすぎた場合、リン酸やマグネシウムなどの他の物質の吸収の抑制や、泌尿器での結石の形成などが起こる。

 

 

リン(P)
リンは、ラッカセイやアーモンドなどの食品に多く含まれている。マクロミネラルにあてはまる。

 

リンは、カルシウムの次に体内に多く存在するミネラルである。骨や歯には、体に存在するリンの約85%が含まれている。

 

リンは、血液にも含まれている。血液に含まれるリンの濃度は、2.5~5.0mg/dlを正常な範囲となっている。血液中のリンの濃度は、食事や排尿などによって調節される。

 

・リンの作用
リンは、骨、歯、核酸、ヌクレオチド、補酵素、リン酸化合物などを構成する成分となる。

 

 

マグネシウム(Mg)
マグネシウムは、未精製の食品やヒジキなどに含まれている。マクロミネラルにあてはまる。

 

体内に存在するマグネシウムの量は、約25gとされている。そのうち、約50~60%が骨に含まれ、約27%が筋肉に含まれる。それ以外のマグネシウムは、血液などの体液や、脳や腎臓などの組織に含まれている。

 

・マグネシウムの作用
マグネシウムが関与するものには、筋の収縮、酵素の活性化、神経の興奮、脂質代謝、副甲状腺ホルモンの分泌がある。

 

上記のうち、「筋の収縮」と「神経の興奮」の2つは、カルシウムの働きに対して、拮抗する形で作用する。

 

・マグネシウムの欠乏症
体内のマグネシウムが足りなくなった場合、低カルシウム血症、精神疾患、運動失調などが引き起こされる。

 

また、多く摂りすぎたマグネシウムは、排尿によって体の外に出て行く。このことから、マグネシウムを摂り過ぎても過剰症を起こすことはない。

 

 

カリウム(K)
カリウムは、海藻、野菜、芋、種実などの食品に多く含まれている。マクロミネラルにあてはまる。

 

体の細胞の中でもっとも多い陽イオンは、カリウムイオンである。また、体の細胞の中には、カリウムの約98%が含まれている。残りの約2%は細胞の外にある。

 

・カリウムの作用
カリウムが関係するものとして、酵素の活性化、筋の収縮、細胞の内側におけるpHの調節、細胞の内側における浸透圧の維持などがあげられる。

 

・カリウムの欠乏症
嘔吐や下痢などによって、体内のカリウムが足りなくなる場合、低カリウム血症を起こす恐れがある。

 

・カリウムの過剰症
腎臓の疾患によって、カリウムの排出に異常が起こるなどで、体内のカリウムが過剰に存在する場合、高カリウム血症を起こすことがある。

 

 

ナトリウム(Na)
ナトリウムは、食塩の形でさまざまな食品や調味料に含まれている。マクロミネラルにあてはまる。

 

体内に存在するナトリウムのうち、約50%が細胞外液に含まれている。残りの約50%のうち、約10%が細胞内液に含まれ、約40%が骨に含まれている。

 

・ナトリウムの作用
血漿に含まれているナトリウムイオン(Na+)の作用には、アミノ酸や血糖(グルコース)の輸送、pHや浸透圧の調節などがある。

 

・ナトリウムの欠乏症
体内に含まれるナトリウムが足りなくなると、筋肉の痛み、食欲の低下、血液の濃縮などが引き起こされる。

 

・ナトリウムの過剰症
長期間にわたってナトリウムを多く摂り続けた場合、それが高血圧症の原因になる。また、食塩の過剰摂取によって、細胞外液に含まれる水分が増加し、浮腫が現れる場合がある。

 

 

塩素(Cl)
塩素は、食塩としてさまざまな調味料や食品に含まれている。マクロミネラルにあてはまる。

 

体に存在する塩素のうち、約70%が塩素イオン(Cl-)の形で細胞外液に含まれている。残りの約30%は、塩素イオンの形で細胞内液に含まれている。

 

・塩素の作用
塩素は、胃酸を構成する成分である。その他にも、塩素イオンとして、pHや浸透圧の調節などを行う。

 

 

硫黄(S)
硫黄は、魚、卵、肉などの食品に多く含まれている。マクロミネラルにあてはまる。

 

・硫黄の作用
硫黄は、SH基をもっている。硫黄がもつSH基は、酵素の活性の調節や、生体に存在する毒素の解毒などの機能をもつ。また硫黄は、含硫アミノ酸を構成する成分でもある。