上皮性・結合組織性の膜

体内の膜
人の体の内側には、いくつか空間(内腔)があり、その空間の表面をおおう膜が存在する。こうした膜には、さまざまな種類が存在する。

 

上皮性の膜
上皮性の膜は、上皮組織とそれを支える結合組織で構成される。上皮性の膜には、粘膜、漿膜、皮膚が存在する。皮膚については「皮膚の構造・付属器」のページで説明しているため、ここでは省略する。

 

 粘膜
身体の外側につながっており、内腔をもつ器官(呼吸器、消化器、泌尿器、生殖器)の内腔をおおっている膜を粘膜という。一般的に、粘膜の表面は皮膚のように角化しない。また、粘膜はねばり気のある粘液を分泌する。

 

粘膜の組織には、粘膜上皮、粘膜固有層、粘膜下層、粘膜筋板の4層が存在する。

 

・粘膜上皮
粘膜上皮は、存在する器官によって構造と性質の違いが大きい。

 

 ・気管や鼻腔の場合 … 表面の液体を運びやすい多列線毛上皮で構成されている。

 

 ・食道や口の中(口腔)などの場合 … 極めて丈夫で摩擦に強い重層扁平上皮で構成されている。

 

 ・胃と腸の場合 … 液体の分泌や吸収に対応できる単層円柱上皮で構成されている。

 

 ・膀胱や尿管の場合 … のび広がりやすい移行上皮で構成されている。

 

・粘膜固有層
粘膜固有層は、きめ細かい結合組織であり、粘膜がもつ頑丈さを示す中心的なものとなっている。体内の大部分の神経、リンパ管、毛細血管に数多く存在する。

 

・粘膜下層
粘膜下層は、平滑筋などの層と粘膜固有層とをつないでるやわらかい組織である。粘膜下層はすきまを多くもつ疎性結合組織であり、太めの血管や神経などが通っている。

 

・粘膜筋板
粘膜筋板は、薄い平滑筋の層である。粘膜筋板が存在するのは、胃、腸、食道などの消化管にある粘膜固有層の下側である。粘膜筋板は、粘膜を細かく運動させるはたらきをもつ。

 

 漿膜(しょうまく)
体腔とその内側の気管の表面をおおう膜を漿膜(しょうまく)という。漿膜は、漿膜上皮とその下にある薄めの結合組織で構成されている。粘膜上皮は中皮ともよばれ、単層扁平上皮となっている。

 

漿膜にあてはまるものには、心膜、胸膜、腹膜がある。

 

漿膜の表面は、自身が分泌する漿液によってなめらかになっている。漿液が分泌されることで、身体の臓器が動く際に、摩擦がおこらないようになっている。

 

漿膜には、臓器などを支える体壁の内側をおおっている壁側葉と、器官表面をおおっている臓側葉が存在する。壁側葉と臓側葉はひとつながりになっており、口が閉まった袋のようになっている。壁側葉と臓側葉で構成されるものには、心膜腔、胸膜腔、腹膜腔がある。

 

心膜腔、胸膜腔、腹膜腔には、漿液が少しずつ含まれている。漿液の量は、漿膜が炎症をおこした際に増える。すると、白血球などの細胞が増加する。

 

腹膜腔に漿液がたまることを腹水という。また、胸膜腔に漿液がたまった場合は胸水という。

 

結合組織性の膜
結合組織性の膜は、上皮の性質をもっていない。結合組織性の膜にあてはまるものには、関節腔、腱鞘、滑液包などの内側をおおっている滑膜がある。

 

滑膜の表面では滑液が分泌される。滑液が分泌されることで、関節がなめらかに動けるようになる。